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今回は「髪の毛」を作成していきます。
「髪の毛」は造形精度を求められないので、結構楽勝なんじゃない?とタカを括っていたらとんでもありませんでした。
多分、「髪の毛」は髪型によって難易度が変わってくるんだと思いますが、今回の「リコちゃん」の髪型は結構難しい部類に入るんじゃないでしょうか??(まだ他の髪型を作成してませんので、素人の勘ですが)
それでは、何が難しいのか?を見ていきましょう。
「髪の毛」のベースモデルの作成
「髪の毛」の作成は、まずベースになるモデルをひとつ作り、それを一束ずつ変形させて全体を形作っていきます。
ベースモデルは、ZSphereで大まかな形を作り、それを「アダプティブ・スキン作成」でメッシュに変換して作成します。
その後、「ディバイド」でメッシュを細かくしながら、「Moveブラシ」で全体の形を整えて、「hPolishブラシ」で毛の流れにエッジを立てるような造形して仕上げます。
この「髪の毛」のベースモデルを作成したところまでは、なかなかいい感じに出来てるじゃん、と思ってたのですが・・・
ベースモデルから「髪の毛」の束を作っていく
このベースモデルを「複製→変形」して様々な形の「髪の毛」の束を作成して頭に配置していきます。
「髪の毛」の束を作成するに当たっては、変形しやすいように一旦「SubDiv4→SubDiv1」にして作業をします。
そして、目指すはこんな感じの「髪の毛」です。
わかりますかねぇ。先程のベースモデルからこの「髪の毛」の束を変形しながら一つずつ作っていかないといけないんです・・・
「髪の毛」の変形・作成(前髪の作成)
まず、本では最初に作成した「髪の毛」のベースモデルを「ディバイドを低くして」「Moveなどで調整して」他の髪の毛も作成していくという説明しか書かれてません。
「髪の毛」のベースモデルを、まずはディバイドを低くして、それを「複製」して、色々と変形しながら次の「髪の毛の束」を作成していきます。
最初に作成する「髪の毛」のベースモデルは、前髪の一番大きい束だと思ってますが、そこから隣の前髪を作成するのは、ほぼ「Moveブラシ」は使わずに「ギズモ」で前後・左右方向への「拡大・縮小・移動」や「回転」でほぼ作成できるので、この辺までは初心者でもそれほどハードルは高くありません。(以降の図では、作成した後にSubDiv4に戻した状態の図を表示してます)
前髪はベースモデルとほぼ同じような形状の「髪の毛の束」を作成して重ね合わせるだけですので、ここまでは「順調!」って心の中で叫ぶくらいの余裕があったのですが・・・
「髪の毛」の変形・作成(前髪以外の部分)
さぁ、前髪が出来たら、ここからは地獄の試練の時間です。
基本は前髪と同じで、ベースモデルから変形していきます。
(後ろ髪等の場所によっては、変形してできた「髪の毛」の束に似たような「髪の毛」の束を作る場合には、ベースモデルではなく変形して作成したものを複製して作成します→似たようなものをベースにした方が変形作業が比較的楽になりますので)
ただ、変形の仕方・度合いが桁違いになってきて、変形難易度が一気にアップします!
それでは、何がそんなに大変なのでしょうか??
横の「髪の毛」を例に見てみます。
ベースモデルを引き伸ばしたり短くしたり、横方向に幅を広くしたり狭めたりというのは「ギズモ」である意味簡単にできるので、全く問題ではありません。
一番問題なのが、図の髪の毛の先端の方のように「うねらせる」ような変形で、これがかなり曲者なんです。
「Moveブラシ」による変形
ZBrushで「変形」をさせる場合に、多分メジャーな方法としては「Moveブラシ」と「ギズモ」を使う方法じゃないかと思います。
私のまだ短いZBrushの経験の中で、(まだベーショックなブラシしか使っていないという事情もありますが)「Moveブラシ」を使って変形(形状の微修正等も含めて)させる機会は結構多いと感じますし、事実「Moveブラシ」はそうした作業をするのに非常に便利なブラシだと感じてます。
ただ、ちょっと難しい側面もあるというのを今回の「髪の毛」の変形作業で実感しました。
次の図はベースモデルの先端を、「Moveブラシ」を使って右方向に曲げる作業をしたものです。
えっ、ちゃんと上手く曲がってんじゃないの??
すごくうねり方が髪の毛っぽいよね。
と、思われるかもしれませんが、自分の意図としては曲げた先端は曲げた方向と同じ方を向いて欲しかったのですが、少し曲げた方向とは逆に曲がってしまってますよね。
それじゃぁ、先端をまた「Moveブラシ」で逆に向かせるようにしたら?と単純に思うかもしれませんが、そう上手くはいきません。
先端の「向き」が上手く変わらないんです。
ですので、もし「Moveブラシ」で先端の「向き」を変える場合には、先端を思い切り拡大して、先端の「点」を「Moveブラシ」で動かしてやる、という「点」レベルで動かして変形させてやるという超ミクロな方法でやらないと「Moveブラシ」では上手く変形できません。
しかしその場合、1点だけを動かせばいい、というわけにはいかず、周辺の点もそれに合わせて動かしてやらないと形状が全くおかしくなってしまいます。
ですので、先端からその後ろの点を一つずつ根気よく動かしていかないとモデルとしての形状がキレイなものになりません。
ただ、それぞれの「点」を手作業で別々に動かすので、どうしてもトポロジー的にはグネグネしたものになってしまいます。
そういう場合には、「SmoothAltブラシ」で滑らかにすることでキレイな状態にすることが可能です。
ここで「Smoothブラシ」ではなく「SmoothAltブラシ」を使うのは、「Smoothブラシ」だと(強すぎて)周りが痩せてしまうような影響が発生しますが、「SmoothAltブラシ」を使うと、そうした影響が周りに殆ど発生することなくスムースにすることができます。
ただ、これって非常に効率の良くない変形方法ですので、色々な形の「髪の毛」の束をたくさん作らないといけない状況にあっては、とてもやってられません。
「ギズモ」による変形
それでは、次に「ギズモ」による変形はどうでしょうか?
「ギズモ」で変形させるには、以前ポージングでやった脚を膝の部分で曲げる時のやり方と全く同じです。
ベースモデルの上の方を「マスク」して、マスクの境目辺りに「ギズモ」の中心を持ってきて「回転」させます。
「ギズモ」の「回転」で変形すれば「Moveブラシ」を使用した時とは違って、先端が回転方向と同じ向きを向いて変形されるようになります。
(「ギズモ」の「回転」では回転軸を中心に「回転」させるだけですので、先端部分に変な影響を受けることはありません)
基本的には「ギズモ」で解決じゃん、と言っても間違いではなく、ポージング時の膝で曲げるのと同じなので、これで基本的にはOKなんですが、少しZBrushにも慣れてくると細かい部分で気になるところが出てきたりするんです。
「ギズモ」で「回転」した後の状態を見てみると
そうなんですね。口の中を作成する時にも同様の現象が発生しましたよね。
ポリゴンが伸びてしまうと、その部分は上手くブラシが効かなくなってしまいますので、こういう時は「ダイナメッシュ」でしたよね。
当然、それでいいんです。
「ダイナメッシュ」をやってメッシュを貼り直してやればブラシが上手く効くようになります。
ただ、たまたまなんですが、今回のような変形ではこれ以外にも便利な方法があることを知ってしまいました!
「トランスポーズ」による変形(回転)
実は、今回参考にしている本(『「ZBrush Core」で作るフィギュア原型』)では、この「トランスポーズ」のことは一切記載されてません。
全ての本を見た訳ではありませんが、初心者をターゲットにしたような本にはあまり「トランスポーズ」のことは触れられていないのかもしれませんね。
それはなぜか?は分かりません。
ただ、個人的な感想としては全般的には「ギズモ」の方が扱いやすいからなんじゃないかと感じてます。
「トランスポーズ」は使い方にちょっとクセがある感じでしょうかね。
でも、今回のようなケースでは「トランスポーズ」を使うのが、そのクセを考えたとしても結構便利だと感じてます。
「トランスポーズ」は「ギズモ」との切り替えで使用できます。
「ギズモ」はこの状態ですが・・・
「トランスポーズ」はパネル右側のロータリーエンジンの中のようなアイコン(と言ってもクルマ好きにしかわからないですね)をオフにすると切り替わります。
rトランスポーズ」では、このアクションラインを使って変形していきます。
今回のような変形では「トランスポーズ」の「回転」機能を使います。(機能名称は「ギズモ」と同様ですね)
「回転」では図のように「アクションライン」の「終点」を「回転」させたい軸の辺りに持ってきます。
その後、「終点」のオレンジの円の内側にカーソルを近づけると赤い円が表示されるので、それを「回転」させたい方向にドラッグします。
「トランスポーズ」による「回転」と「ギズモ」による「回転」と、同じ「回転」でも結果がどう異なるか?
「ギズモ」に対して「トランスポーズ」による「回転」では曲げた部分のポリゴンの変形度合いに大きな差があります。
「ギズモ」による変形では先の通りポリゴンが伸びてしまいますので「ダイナメッシュ」でメッシュの張り替えを行わないと、その後のブラシによる造形が上手くできない状態でした。
一方で、「トランスポーズ」による変形では曲げた部分のポリゴンの変形は最小限にとどめられ、変形後に特段「ダイナメッシュ」を行わなくても、そのまま続けてブラシの使用ができるようなメッシュの状態となってます。
従って、今回「髪の毛」の束のバリエーションを作成する上では、この「トランスポーズ」による「ポリゴンを大きく崩さない」変形方法がベストマッチでした。
この方法は覚えておいて絶対に損はないと断言できます!
(初心者に言われても・・・と思われるでしょうが、多分間違いないと思います)
「髪の毛」の完成&「帽子」の挿入
やっと、やっと「髪の毛」が完成しました!
作業的には丸3日かかってしまいました・・・長かったぁ。
ちなみに、頭のテッペンはこの後帽子を被せるので「カッパ」状態でOKだそうです。
最後に、別で作成しておいた「帽子」のファイルを開き「ツールコピー」。
次に本体のファイルを開いて「ツールペースト」して、本体を作成していたツールで「帽子」のツールを「挿入」。
(この「ツール」という考え方、扱いがZBrushはちょっと独特だと思いますが、その辺はまた別途)
その後、本体の頭の大きさ・位置に「帽子」を合わせて、髪の毛の凹凸に馴染むように「Moveブラシ」で調整して完成です!
とうとう頭の部分の完成です!!
どうですか? この作業をやっている間に60歳の誕生日を迎えてしまいました・・・
還暦ですよ、還暦!
還暦のおっさんでもここまでできましたよ。
そりゃぁ、細かい所を見ていったら本と比べると結構違うじゃん、という所ばかりですが、でもそれなりにカワイイ感じで造形できたんじゃないでしょうかね。(多分に自己満入ってますけどね(笑))
これだけできるとモチベーションは完全にアゲアゲですよ。
次は「手」の作成ですが、これがまた難関の「指曲げ」のオンパレードですのでかなり苦戦しそうですが、また頑張りますので、次回も楽しみにしていてください。
それではまた!